親が亡くなり、しばらくそのままにしていた実家を取り壊すことにしました。
取り壊すのには多額の費用が必要ですが、そのままにしておいても毎年税金の負担がありますし、それなりに管理手間も必要なので、ここでそういったものをすべてクリアにすることにしました。
解体費用として、どのぐらい準備しておく必要があるのかを概ね把握しておくために、近所で取り壊しを行った家の話を聞いてみると、概ね150万円~200万円程度という感覚でした。
それだけの金額を一度に支払うのは相当な負担なのですが、何とか費用を準備して、業者に見積に来てもらう段取りをしていました。
すると、取り壊しの予定を聞いた隣家の人から、思わぬ話が出てきました。
「この家をしばらく使わせてもらえないか」というものです。
既に取り壊しに向けて準備していたとこだったので、少し考えたのですが、決して悪い話ではないので、使ってもらう方向で調整を行うことにしました。
実家の状況
実家は、元々築60年以上の建物なのですが、それを40年ぐらい前に増改築しています。
まったく住めない状況ではないのですが、床、壁、屋根などは破損や劣化が見られ、給排水設備なども一部故障しています。
この家で快適に生活するためには、全面的に改修が必要です。
床下は腐食している部分があり、歩いていると所々で床が沈み込む場所があります。
外壁は、60年以上前に造られた部分は非常に薄く、トタンの劣化により、外の風が直接室内に吹き込んでいます。
屋根は、長年塗り替えを行っていないため、塗装が大きく剥がれています。
その他、鉄骨がむき出しになっている部分は錆がひどく、また、バルコニーからは水が下に抜けています。
さらに、湯沸し器やトイレの配管は水漏れも見られますし、古い家具、備品、家電なども大量に残存しています。
こういった状況なので、隣家の人から「解体するのであれば、この家を使わせてもらえないか」と言われた時には、とてもこのまま使えるものではないと一旦は断りました。
しかし、壊れている部分や不都合なところは隣家で改修し、また残存物も今のままで構わないということだったので、それでも良いのであれば、と考え直しました。
隣家の状況
この家を利用したいと言う隣家は、自宅が店舗兼用となっているので、最初は倉庫として使いたいのかと思ったのですが、そうではありませんでした。
子供が2人おり、今まで2人で同じ部屋を使っていたようですが、それぞれ自分の部屋が欲しいと言い出してきたので、そのスペースが欲しかったそうです。
なお、その隣家と実家とは非常に近接しているので、リフォームの際には、両者の家を繋いでしまうといったこともあり得るのではないかと思います。
賃貸契約か譲渡かの選択
隣家の人が実家を利用するにあたり、賃貸契約を行うか、譲渡を行うかという選択肢が考えられます。
賃貸契約の場合
当初、隣家からは「リフォームは自分たちで行うので、実家を賃貸させてもらえないか」という話をされました。
子供が大学生などになり、家を出て行ってしまえば、また勉強部屋などのスペースは必要なくなるので、そんなに長期間使うことはないのではないか、と考えていたようです。
そして必要がなくなったら、また、お返ししますというスタンスでした。
返却されたところで、こちらとしては再度利用するつもりはないため、結局その時に撤去しなければならないということには変わりありません。
ただ、賃貸を行った何年分かの賃貸料によって、撤去費用の一部を賄えるようにはなります。
仮に、隣家に使ってもらうことなく、現段階で取り壊してしまうと、そのまま撤去費用が発生するだけですが、何年間か賃貸を行った後に撤去を行うと、その期間の賃貸収入により、撤去費用の負担を減らすことができるようになります。
しかし上述のとおり、そのまま住めるような状況ではありませんし、リフォームや残存物処理も先方が行うということなので、賃貸料といっても極めて少額なものになるだろうと思っています。
譲渡の場合
一方、譲渡という方法も考えられます。
建物については、ほとんど不動産価値もないうえ、取り壊そうと思っていたぐらいのものなので、譲渡といっても無償とするのが適当だろうと思っています。
譲渡のための事務手続きは発生しますが、こちらにとっては権利が移転することにより予定していた解体費用が不要となるので、出費は非常に軽くなります。
また、賃貸契約の場合には、今後継続的に事務的な作業が発生しますし、固定資産税は引き続き払い続けなければなりません。
しかし、一旦譲渡してしまえば、その後は一切の手続きや税金は発生しなくなります。
あとは、譲渡を受けた側が自由に改修し、また、必要なくなったら自由に撤去してもらえば良いので、気が楽になります。
自分にとって有利な方法は
上記のとおり、こちらとしては譲渡の方が好都合だと思っていますが、先方の都合もありますので、これから調整することになります。
隣家としては、極めて低額で賃貸契約を行った方が、都合が良いのかもしれません。
ただ、それでも多少なりとも賃貸料が入るので、こちらにとってもメリットはあります。
また、いずれは撤去されることになるとはいえ、実家が何らかの形でもう少し存在するというのは、嬉しいことです。
そして個人的には、庭に植えた木を残せることを非常にありがたく思っています。
この木は、家を取り壊す際に、誰か引き取ってもらえる人はいないかと思っていたぐらいに思い入れがあったのですが、大きくなりすぎたためそれも難しく、伐採するしかない状況でした。
しかし、家を引き継いでくれる人が現れたおかげで、これも当面の間ですが、伐採せずに残すことができました。
隣家からの「この家をしばらく使わせてもらえないか」という話は、撤去費用の負担軽減という面でのメリットがありますが、それと同じぐらいに、この木を当面残すことができることにメリットを感じています。
以上、実家の取り壊しを考えていたところ、思わぬ話が舞い込んできたといった事例について紹介しました。
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