親が亡くなり、しばらくそのままにしていた実家を取り壊すことにしました。
そこで、近所の人にその旨の挨拶に行くと、隣家の人から「この実家をしばらく賃貸させてもらえないか」という話をされました。
隣家では、子供が大きくなって自分の部屋が欲しいと言い出してきたため、そのスペースを求めていたようです。
とは言え、実家は築年数も古く、床、壁、屋根などは劣化し、破損しているところも数多くありました。
また、古い家具、備品、家電なども大量に残存していたため、賃貸にする場合には相当な準備が必要になるだろうと思っていました。
しかし、残存物の片付けやリフォームは、すべてその隣家で対応するという申し出だったので、それであれば賃貸ではなく、譲渡をしてしまった方がお互いにスッキリすると思い、無償で譲渡を行うことになりました。
ただ、実家の名義は、はるか前に亡くなった父親のものであったため、権利を持たない自分が勝手に他の人に譲渡するわけにもいきません。
そのため、まずは父親から自分に、そして自分から隣家に、段階的に権利を移すための手続きを行いました。
ここでは、その流れについて紹介したいと思います。
実家の名義
父親は20年近く前に亡くなっているのですが、実家の名義はずっと父親のままになっていました。
父親が亡くなった後、その家には母親がひとりで住んでいたので、その段階で母親の名義にするべきだったのですが、手続きを放置していました。
というか、そこまで考えが至っていませんでした。
その後、母親が亡くなってからも、実家の名義は父親のまま放置の状態が続いていました。
相続手続き
父親名義の家を自分が勝手に他の人に譲渡することはできないので、まずは父親から自分への相続手続きを行うことになります。
田舎の老朽化した家なので、不動産価値としてはほとんどないのですが、相続手続きには相続の権利を持つ人全員の承諾が必要となります。
事務的に言うと、相続人全員の協議により実家の権利(財産)を誰が相続するのか決めた書類『遺産分割協議書』を作成することになります。
本来は、不動産以外の遺産についてもこの協議書によって分割方法を定めるのですが、我が家の場合には幸いにも?他に問題になるような遺産はなかったので、ここで初めて遺産分割協議書を作成することになりました。
そして、そこにすべての人が署名し、実印を押して法務局などに提出することになります。
今回の場合は、既に母親は亡くなっているので、その子供たち(自分と兄弟姉妹)で署名と押印を行っています。
なお、遺産分割協議書を作成する際には、相続の権利を持つ人をすべて調べる必要があります。
つまり、自分が今まで知らされていなかった相続の権利者(例えば、会ったことのない兄弟姉妹)がいた場合、その人からも署名、印をもらわなければなりません。
ただ、実際には見知らぬ兄弟姉妹を探すというより、他に相続権利者はいないことを証明するための調査となります。
事務手続きの司法書士への依頼
そういった必要な書類の準備や登記申請については、司法書士に依頼するのが一般的です。
書類関係を準備するのは自分でもできるのですが、時間の節約のため、今回は基本的に依頼できるところはすべて依頼しています。
司法書士のところへ行くと、どの範囲の作業までを司法書士に依頼し、どこまで自分で行うのかを、最初に確認されます。
当然、司法書士に依頼する内容が多くなるほど費用は高くなるのですが、その分、自分の労力を減らすことができます。
今回の場合、基本的に事務手続きはすべて司法書士に依頼しました。
ただ、印鑑証明の取得については本人しかできないので、そこだけは自分で行っています。
また、それぞれの相続人の印鑑証明も各自で取得してもらっています。
所有権移転(贈与)手続き
相続手続きが終わり、実家の名義が自分のものになった段階で、ようやく隣家に所有権を移転(贈与)する手続きを行うことができるようになります。
ただ、司法書士に依頼すると、相続手続きと所有権移転の手続きは一連の作業としてやってもらうことができます。
その場合、こちらではいくつかの書類に署名、押印をしておくだけで、後は隣家に権利が移転されるまで待っていれば良いということになります。
なお、無償譲渡とはいっても、手続や税金といった費用は発生します。
その際、費用負担は『譲渡する側』が行うのか、『譲渡される側』が行うのか、あるいは『分担』するのかは、事前に決めておく必要があります。
今回の場合は、『取り壊しや片付けの負担がなくなった代わり』と言っては何ですが、手続きに必要な負担はすべてこちらで行っています。
隣家では片付けやリフォーム、そして将来的には取壊しの費用が発生することになるので、手続き費用ぐらいはこちらで負担しても安いところです。
ちなみに今回、相続から所有権移転までの一連の手続きで必要となった費用は、税金を含め20万円弱程度でした。
この金額は、家の状況によって違うので、一概にこの程度だとは言えないのですが、少なくとも片付けや取壊しを行うよりははるかに安い金額です。
取壊しの直前ではなく、事前に近所の人に挨拶に行っておいたことが、結果的には建物の有効活用や出費の抑制に繋がったのかと思います。
以上、親の名義になっていた実家を隣家に無償譲渡した事例について紹介しました。
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