リフォームでの失敗例で良く見られる項目に、コンセントやスイッチの配置に関するものがあります。
コンセントの配置における代表的な失敗例は、『ここにもつけておけば良かった』というものです。
また、コンセント、スイッチに共通する失敗例として、『この場所では使いにくかった』というものもあります。
『ここにもコンセントをつけておけば良かった』という失敗を防ぐためには、とにかく数多くコンセントを配置しておけば良いのですが、その分、費用もかかりますし、見た目にも綺麗ではありません。
また、『この場所ではコンセント、あるいはスイッチが使いにくかった』という失敗に関しては、実際に使ってみて初めて気が付く場合もありますが、設計段階でチェックできることもあります。
一方、マンションでは、コンセントやスイッチ類を簡単に配置できる壁と、そうではない壁があります。
いわゆる『専有部の壁』か、『共用部の壁』かの違いです。
専有部の壁であれば、その部屋の所有者が自由に使えますが、共用部の壁にコンセントやスイッチ、あるいは配線を勝手に埋め込むことはできません。
共用部の壁にコンセントやスイッチ等を配置しようとする場合には、壁そのものに手を加えないように、その手前に新たな壁をつくる(壁をふかす)ことが原則となります。
そしてその結果、多少なりとも部屋が狭くなってしまいます。
そこで、ここではマンションリフォーム時にコンセントやスイッチ類の配置を考える際の前提として、専有部の壁と共用部の壁の条件の違いについて示したいと思います。
専有部の壁と共用部の壁
マンションには、専有部の壁と共用部の壁があります。
それぞれのマンションによって多少の違いはありますが、概略的に言うと下図のように、間仕切り壁は専有部、各戸を取り囲んでいる壁(外壁と戸境壁)は共用部というのが一般的な構造です。
- 間仕切り壁は内部空間を区切る壁
- 外壁は外部に面する壁
- 戸境壁は隣の住戸との境を仕切る壁
コンセントやスイッチ等の配置は、専有部の壁に行うのであれば何の問題もありませんが、共用部の壁にそのまま埋め込むことはできません。
共用部は、その名のとおり、マンション全体の共用のものなので、自分専用で使用したり、改造したりすることはできないためです。
特に、最近のマンションの戸境壁はコンクリート面に直接クロス(壁紙)を貼っているので、戸境壁に直接コンセントやスイッチ等を埋め込むことは物理的にも困難です。
なお、建築当初の段階で、既に戸境壁にコンセント等が埋め込まれている場合もあると思いますが、それを同一面上で移動することも、コンクリートを削る結果になってしまうので、基本的には認められません。
外壁については、コンクリートの構造体の内側に断熱材などが入っており、その内側にボードが配置され、そのボードにクロス(壁紙)などが貼られているのが一般的な構造です。
この外壁のうち、共用部の範囲はコンクリートの構造体までなのか、または断熱材までなのか、あるいはボードまでなのかといったことは、マンションによって違ったり、あるいは、はっきりしていなかったりします。
一般的には、コンクリートの構造体までが共用部であることが多いのですが、リフォーム時には確認が必要です。
共用部の壁にコンセントやスイッチ類を配置する場合
上述のとおり、共用部の壁にコンセントやスイッチを埋め込むことは原則的にはできません。
外壁の場合、コンクリートの構造体までが共用部であることが確認できれば、現状の室内のクロス面にコンセント等を配置することも可能ですが、戸境壁の場合には一般的にコンクリート面と内装仕上げの間に空間がないため、現状のクロス面にコンセント等を配置することは不可となります。
そのため、共有部の壁にコンセントやスイッチを配置したい場合には、壁本体から内側に3cm程度の空間をつくったうえで新たな壁を配置し、そこに配線やコンセントボックスあるいはスイッチボックスを埋め込む必要があります。
つまり、コンセントボックス等を埋め込む空間の分だけ、壁の仕上がり面が手前に出てくることになり、結果的に部屋が少しだけ狭くなります。
ですから、どうしても共用部側の壁にコンセントを配置したいと言う場合は別ですが、共用部側でも専有部側でも、どちらにコンセントを配置しても良いような条件の場合には、専有部側に配置をした方が、少しでも部屋を広く使うことができるようになります。
コンセント、スイッチの配置を考える前提として
冒頭に記したように、『ここにもコンセントつけておけば良かった』、あるいは、『この場所ではコンセントやスイッチが使いにくかった』という失敗を避けるためには、設計段階で十分にそれらの数や位置を検討する必要があります。
その際、前提条件として、できるだけ共用部側の壁を避け、専有部側の壁を利用することを考慮しておくと、さらにリフォームを効果的なものにすることができます。
もちろん、そういったことが分かったうえで、それでも共用部側に配置したい場合はそれで良いのですが、『部屋が狭くなるぐらいなら、専有部側の壁に配置すれば良かった』と後から思うことがないように、十分に使い勝手のシミュレーションをすることも必要となります。
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